Japanische Klassiker mit Furigana
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むらさきだいなごん
紫大納言
Lesen Sie 紫大納言 (むらさきだいなごん) von Sakaguchi Ango (坂口 安吾) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.899 Zeichen · 26 Bildschirme
暈さえもない皓月をふり仰ぎながら、それに向って、声一杯訴えたい切なさが、胸をさき、あふれでようとするのであった。御覧の通りの仕儀なのでした。無道な賊が現れて、笛を奪ってしまったのです。非力の私に、どうするてだてがありましょう。御覧なさい。私は太刀も奪われました。衣も奪われてしまったのです。残ったものは、汗衫ひとつと、命だけ。どうにも仕方がなかったのです。神々よ。私のせつない悲しさを照覧あれ、と。あつい涙が、頬を流れた。むしろ天女に慰めてもらえる権利があるような、子供ごころの嘆きがつのった。
山科の家へ辿りついて、彼は叫んだ。
「あなたのふるさとであるところのあの清らかな月の光が、すべてを見ていた筈でした。私は笛をとられました。丁度あなたの小笛を拾ったあのあたりで、数名の無道の賊徒が現れて、いきなり、小笛をとりました。それから、太刀も、衣も、とりました。命をとられなかったのが、不思議です。いいえ、私は、命が惜しいとはつゆ思いませぬ。それが償いとなるならば、即坐に一命を断つことも辞しますまい。あなたの命とも申すような大切な小笛を奪いとられた悲しさに、私の涙が赤い血潮とならないことが、もどかしい。