Japanische Klassiker mit Furigana
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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 細雪 (ささめゆき) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 150.580 Zeichen · 287 Bildschirme
花梨の莟が一つ綻びかけているのを、いかにも尼寺のものらしく眺めなどしながら、山の清水の美味なのに舌鼓を打ちつつコップに何杯もお代りを所望したりして、二十丁の坂路を明るいうちに下った。帰りに御室の仁和寺の前を通ったので、まだ厚咲きの桜には間があることが分っていたけれども、せめて枝の下にでも休息して木の芽田楽をたべるだけでもと、幸子は貞之助を促して境内に這入ったが、ぐずぐずしていて日が暮れると、又もう一晩泊りたくなることが、毎度の経験で知れているので、嵯峨にも、八瀬大原にも、清水にも、方々に心を残しながら、七条駅に駈け付けたのはその日の五時少し過ぎであった。
それから二三日立って、或る朝幸子は、貞之助が事務所へ出かけて行ってから、いつものように書斎の整理をしに這入ったが、ふと、夫の机の上に、書翰箋の書き潰しが展べてあって、余白に鉛筆でこんな文句が走らしてあるのを見つけた。―――
四月某日嵯峨にて
佳き人のよき衣つけて寄りつどふ
都の嵯峨の花ざかりかな
女学校時代に自分もひとしきり作歌に凝ったことのある幸子は、近頃又、夫の影響で、ノートブックの端などへ思いつくままを書き留めたりして、ひとり楽しんでいたのであったが、それを読むと俄に興が動いて、先日、平安神宮で詠みさしたまま想が纏まらないでしまったものを、暫く考え