Japanische Klassiker mit Furigana
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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 細雪 (ささめゆき) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 150.580 Zeichen · 287 Bildschirme
「港に一艘軍艦らしいものが這入っておりますなあ、―――」
と、幸子も今は仕方なしに気を引き立てて、
「あれ、何処の国の軍艦でございましょうか」
などとおあいそを云っていたが、階下の帳場へ掛合いに行っていた陣場夫人が、その時困った顔をしてあたふたと上って来た。
「幸子さん、えらい申訳がないねんけど、日本間塞がってるよってに、支那間で辛抱してほしい云うねんわ。………さっき電話かけた時は、分りました、確かに日本間取って置きます云うてんけど、何せ、ここのうちはボーイが支那人ばかりでっしゃろ、そやさかいに、何遍も念押したことは押したけど、やっぱり此方の云うことがあんじょう通じてえへなんでんわ。………」
貞之助はこの二階へ上った時から、廊下に面した支那間が用意してあるのを見て、変に思っていたのであるが、ボーイの聞き違いだとすれば強ち夫人を責める訳には行かないようなものの、電話に出たのがそんな頼りない支那人のボーイであったのなら、何とかその上にも念の入れ方があったろうものを、畢竟幸子に対する労わりの心が足りないところから起ったのであるとしか思えなかった。それに夫の陣場にしても、野村にしても、約束が違ったことについては何の弁解もしないで、頻りにこの場所の眺望を褒めてばかりいるのである。