Japanische Klassiker mit Furigana
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ぜつえんたい
絶縁体
豊島 与志雄
Lesen Sie 絶縁体 (ぜつえんたい) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.752 Zeichen · 38 Bildschirme
近所のお上さんたちの間だけの他愛もない噂だったが、実状にふさわしくないその噂が、何の矛盾もなく、受け容れられていたのである。
二
或る年の春さき市木さんの娘の弘子さんが病死した。あまり突然のことなので、伝え聞いた人々も面喰った。
三日ばかり寝ついたきりだったとか。初めは感冒のようだったが、高熱が出て、物を呑み下すのが困難になり、次で呼吸も困難になった。医者が呼び迎えられた時は、もう、喉の粘膜に白い義膜が厚く拡がり、心臓も弱っていた。注射や其他の手当も効目がなかった。悪性のジフテリアで、弘子さんほどの年齢には珍らしいことだった。
近所の住人はたいてい、戦争中から戦後にかけて入れ替っていて、以前の隣組制度の誼みもなく、市木さんの方でも近所づきあいを一切しなかったが、然し、市木さんの家の不幸に対して素知らぬ顔も出来なかった。代表格で数人のひとが世話をやき、それから私が最も立ち働いた。
市木さんは泰然自若としてる風に見えた。そして何事も自己流で押し切った。表に忌中の簾を出すことを承知しなかった。弘子の死去を広告するには及ばないと言った。僧侶も神官も呼ばなかった。