Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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かいだんいちやぞうし

綺堂随筆 江戸のことば

岡本 綺堂

Lesen Sie 綺堂随筆 江戸のことば (かいだんいちやぞうし) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.152 Zeichen · 27 Bildschirme

Aozora Bunko

お角さんは町内の左官屋のひとり娘でした。お父さんの藤吉というのは相当に腕のある職人で、弟子ふたりと小僧ひとりを使いまわして、別に不自由もなく暮らしているのでした。お角さんはことし十六で、浅井さんへ手習いの稽古に来ていた関係から、ゆうべも今夜も手伝いに来ていたのです。阿母さんはお時といって、ふだんから病身の人でした。

不思議とはいいながらも、こうなると誰の胸にも先ず浮かぶのは、余一郎さんとお角さんとの関係です。若い同士のあいだに何かの縁が結ばれていて、屋敷へ帰参が叶うことになれば、二人は逢うことが出来ない。万一、お国詰めにでもなれば一生の縁切れです。そこで、二人が相談して駈落ちをした。――と、まあ考えられるのですが、それならば今夜のような時を選ばずとも、もっと都合のいい機会があったろうと思われます。いかに年が若いといっても、二人ともに子供ではなし、駈落ちと決心した以上は相当の支度をして出る筈です。この雨のふる晩に、着替えの一枚も持たずに、どこへ飛び出したのでしょう。

そう考えて来ると、二人の駈落ちも少しく理屈に合わないように思われます。さりとて、まさかに心中する程のこともありますまい。