Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ぬいこ

縫子

宮本 百合子

Lesen Sie 縫子 (ぬいこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.962 Zeichen · 20 Bildschirme

Aozora Bunko

「ああおいしい」

如何にも好物を嬉しそうに抱え込んでいると、ガラリと格子が開いた。おやと登美が箸を止め、出て行こうとする間もなく続いて境の唐紙が一気に開かれた。

「やあ今日は、何だ、縫ちゃんどっか悪いの」

和服で立ったのは従兄の英輔であった。

「いやな英兄さん、びっくりしたわ」

登美は改めて、

「こんにちは」

と少女らしい挨拶をした。

「どうしたの、悪いの」

縫子は、鼻のところまで夜具の衿を引上げ、赧くなり、極りわるげに眼で笑った。

「頭が重いんだって」

登美が代って答えた。

「へえ、風邪? この頃流行ってると見えるね、クラスでも閉口してる奴があった」

そしてまた、寝ている縫子を顧みた。

「大したことないんだろ?」

縫子は合点した。

「姉さんの、気病よ」

「仮病でなくて幸だ、ハハハハハハ」

登美がお茶を出したり、それを英輔が飲んだりするのを傍で眺めると、縫子には自分の寝ているのが詰らなく感じられてきた。体がいつか軽くなった。それを無理に夜具で寝かしつけているような心持さえする。

「母さんは?」

「ちょっと買物」

「何、それ」

英輔が登美の抱えていた小丼を見つけたらしい。

「何でもないわ」