Japanische Klassiker mit Furigana
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ろうぎしょう
老妓抄
岡本 かの子
Lesen Sie 老妓抄 (ろうぎしょう) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.601 Zeichen · 31 Bildschirme
柚木の大きい咽喉仏がゆっくり生唾を飲むのが感じられた。
彼女は眼を裂けるように見開いて「ご免なさい」と泣声になって云ったが、柚木はまるで感電者のように、顔を痴呆にして、鈍く蒼ざめ、眼をもとのように据えたままただ戦慄だけをいよいよ激しく両手からみち子の体に伝えていた。
みち子はついに何ものかを柚木から読み取った。普段「男は案外臆病なものだ」と養母の言った言葉がふと思い出された。
立派な一人前の男が、そんなことで臆病と戦っているのかと思うと、彼女は柚木が人のよい大きい家畜のように可愛ゆく思えて来た。
彼女はばらばらになった顔の道具をたちまちまとめて、愛嬌したたるような媚びの笑顔に造り直した。
「ばか、そんなにしないだって、ご馳走あげるわよ」
柚木の額の汗を掌でしゅっと払い捨ててやり
「こっちにあるから、いらっしゃいよ。さあね」
ふと鳴って通った庭樹の青嵐を振返ってから、柚木のがっしりした腕を把った。
さみだれが煙るように降る夕方、老妓は傘をさして、玄関横の柴折戸から庭へ入って来た。渋い座敷着を着て、座敷へ上ってから、褄を下ろして坐った。
「お座敷の出がけだが、ちょっとあんたに云っとくことがあるので寄ったんだがね」