Japanische Klassiker mit Furigana
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おうがいのけんこうとし
耄碌寸前
森 於菟
Lesen Sie 耄碌寸前 (おうがいのけんこうとし) von 森 於菟 (もりおと) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 43.925 Zeichen · 89 Bildschirme
の一字を石摺にした大幅がかけてあり、その下には花一輪さしてない古い支那の陶器と見える六角の花瓶があるばかり、座敷のやや奥まった所に飾りも抽出もない机一脚、その後壁寄りに立てた無地六枚折の金屏風一双、その蔭には主人の整理中の西洋の雑誌や書籍が高く積み重ねてあった。これを見て書物を人の眼につく所に飾り立てない、一風変った癇癖とみた荷風さんは、「しがらみ草紙」以来の鴎外漁史の文学とその性行とについて、何とはなく沈重に考え始めようとした。あたかもその時、一声高く漂い来る木犀の匂いと共に、涼しい夕風に吹き送られる上野の鐘声は主人を待つ間の客を驚かした。
「私(荷風氏)は振返って音する方を眺めた。千駄木の崖上から見る彼の広漠たる市中の眺望は、今しも蒼然たる暮靄に包まれ一面に煙り渡った底から、数知れぬ燈火を輝かし、雲の如き上野谷中の森の上には淡い黄昏の微光をば夢のやうに残してゐた。私はシャワンの描いたジェヴィエーブが静かに巴里の夜景を見下してゐる、かのパンテオンの壁画の神秘なる灰色の色彩を思出さねばならなかった。
鐘の音は長い余韻の後を追掛け追掛け撞き出されるのである。