Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おうがいのけんこうとし

耄碌寸前

森 於菟

Lesen Sie 耄碌寸前 (おうがいのけんこうとし) von 森 於菟 (もりおと) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 43.925 Zeichen · 89 Bildschirme

Aozora Bunko

と三木竹二の肩につかまって泣いたのもこの廊下であった。

またある冬の夜であった。近火を知らせる「三つばん」に驚かされた私は、ネルのねまきの上に羽織を着せられ、祖母や女中といっしょに二階に上った。雨戸を開くと冷たい暗闇に鮮かな火の柱がついそこに見える。しかしそれは楼とは大分隔った谷中に当時あった牧場で、暗い上野の森を背景に牛小屋や木柵がパチパチ音を立てて燃えるのがきこえるようであった。黒い煙が上るかと思うと、それを追いかけ追いかけ紫の焔、紅の焔が一団一団と立ちのぼり、煙にまじって火の粉が花火のように飛んだ。火焔の間を縫って牛の黒い影が躍り狂っている。私は祖母と女中の間に割り込んで両手を筒袖に入れたまま手摺にもたれ、いつまでもその壮観に見とれている。年寄った曾祖母が心配して起きて来て、下から「於菟ちゃん、風邪をひくよ。」とたびたび声をかけるが私は動こうともしない。

十二歳の私、独逸協会中学に入ったばかり、小倉の制服をつけたまま、土曜日の午後であろう、真昼の日の射し込む観潮楼の広間の縁側近くに座っている。祖母が叔母久子(篤次郎の妻、真如女史という筆名で劇評を書いた)と向い合って話しているが、いつも快活でよく笑う叔母がだまって涙をふいている。