Japanische Klassiker mit Furigana
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せいしょ
聖書
生田 春月
Lesen Sie 聖書 (せいしょ) von 生田 春月 (いくたしゅんげつ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 3.023 Zeichen · 6 Bildschirme
「へえ、五銭……夜店で」と僕は驚いたような声を出した。この貴族的な詩人が五銭で聖書を買っている光景を眼前に描き出して、何とも云えず面白い気持がした。が、そのすぐあとから、自分が毎日敷島を二つ宛喫うことを思出して、惜しいような気がした。何が惜しいのかわからないが、兎に角惜しいような気がする。
むやみにいじくって見る。何やら古い、尊い香がする。――気が付くと、Kさんの話はいつの間にかどしどしイプセンに進んでいた。イプセンと聖書、イプセンは常に聖書だけは座右を離さなかったというから、これもまんざら関係がないでもないと思う。
Kさんが立って呼鈴を押すと、とんとんとんと、いかにも面白そうに調子よく階段を踏んで、女中さんが現れた。僕がこっそり好きな女中さんで、頬っぺたがまるく、目が人形のようにぱっちりしていて、動作がいかにもはきはきしていて、リズミカルだ、さすがに詩人の家の女中さんだと来る度に感心する。
僕は聖書を書卓の上に置いて、目の前にあった葉巻を一本取上げた。「さあ、葉巻はどうです」と二度ほど勧められて、もう疾くに隔ての取れた間なのに、やっぱり遠慮していたその葉巻だ。