Japanische Klassiker mit Furigana
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しょっこうとびしょう
職工と微笑
松永 延造
Lesen Sie 職工と微笑 (しょっこうとびしょう) von 松永 延造 (まつながえんぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 71.696 Zeichen · 144 Bildschirme
私の周囲にはナポリの暖風が漲って来た。スリッパから飛び出した足の様に、私の気持はスガスガした。だが、それもほんの一時である。
考え度くない幾つかの事を、私は話さねばならない。
彼の女等の顔は何んなであったか? それは美しかった。だが別れて来ると何うも思い出せない様な顔であった。彼の女等は何んの特長も消し去った美しさで輝く。彼の女等は鏡の様に光って然も「無」なるものであった、私が彼の女等に近附いたとせよ。私は唯私自身の姿を見るのに過ぎないのかも知れなかった。然も此処に二つの恋愛が成り立ったのを思えば、鏡は何かしら性を持っていたのである。
ああ彼の女等の顔には変化がない。余り定まっている整いの為めに、忘れられ易いのだ。定住は無に似ている。雪が積もり過ぎたとせよ。もはや写真機を持って出掛ける必要はなくなる。後ろも前も一色の平坦! 何処へでも、坐って居る所から、レンズを勝手に向けるが好い。一と云う字が撮影されよう。それだ! 彼の女等はその一なのである。後ろ姿も横姿も見て廻る必要はない。山や森はポンペイの市街の様に下層に隠されて了ったのである。
だから本統の彼の女等を知ろうと云うには、何でも骨を折って、廻旋階段を降りて行かねばならない。