Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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はだいろのつき

肌色の月

久生 十蘭

Lesen Sie 肌色の月 (はだいろのつき) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 50.706 Zeichen · 101 Bildschirme

Aozora Bunko

「予感って、やはり、あるものなんだわ」

雨降りのさなか、湖水に行く道で大池の車に拾われたとき、うるさいひっかかりにならなければいいがと、尻込みをしかけた瞬間があった。

「湖水会管理人」という腕章をつけた男が、千慮の一矢ということもあるなどといって、対岸のボート置場のあるほうへ自転車ですっ飛んで行ったが、こんな騒ぎをしているところから推すと、大池はボートで釣りに出たまま、湖水にはまって溺死したのらしい。

「厄介なことになった」

久美子は窓枠に肱を突き、唇のあいだで呟いた。

久美子のプランではキャンプ村のバンガローに移り、今夜、夜が更けてからボートで湖心へ漕ぎだすことにきめていたのだが、このようすでは、どうも今夜はむずかしいらしい。自分をこの世から消しとるという単純な仕事が、どうしてこんなにもむずかしいのかと思うと、気落ちがして、白々とした気持になった。

ボートの艫に小型のモーターをつけた旧式な機外船が、けたたましいエンジンの音をひびかせながらロッジのほうへ走ってくる。黒々と陽に灼けたさっきの管理人が乗っているのが見えた。

「そろそろ、はじまった……」

大池のピジャマとガウンを借り着した、しどけないふうな女を、管理人がどんな眼で見て行ったか、久美子にも察しがつく。