Japanische Klassiker mit Furigana
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はだいろのつき
肌色の月
久生 十蘭
Lesen Sie 肌色の月 (はだいろのつき) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 50.706 Zeichen · 101 Bildschirme
久美子は床に坐り、長椅子の端に額をおしつけて、うつらうつらしていた。
鎧扉をあおる風の音で眼をさました。ちょうど十二時だった。
大池は調子の高い鼾をかき、なにか操られているように、グラグラと頭を左右に揺っていた。薄眼をあけ、動かぬ瞳で空間の一点を凝視している。ただごとではなかった。
「大池さん……大池さん……」
肩をゆすぶりながら、大池の手の甲に、コルク抜きの先を、思いきり強く突きたててみた。なんの反応もない。
「とうとう……」
久美子が恐れていたのは、このことだった。
赤酒になにか曰くがあったのだろうが、そんな詮策はどうでもいい。さしあたっての急務は、なんとかして大池の命をつなぎとめることだ。さもないと、えらい羽目になる。こういう状況では、どんな嫌疑をかけられても、釈明する余地はないわけだから。
ともかく医者を呼ぶことだ。煙突から炎をだせば、石倉がやってくるといっていた。石倉は敵だが、いま利用できるのは石倉のほかにはない。
久美子は煖炉の燃えさしの上に紙屑や木箱の壊れたのを積みあげ、ケロシン油をかけて火をつけた。威勢よく燃えあがった松薪の炎が、鞴のような音をたてて吸いあげられていく。