Japanische Klassiker mit Furigana
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じゆうじん
自由人
豊島 与志雄
Lesen Sie 自由人 (じゆうじん) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 69.030 Zeichen · 139 Bildschirme
」と北村は言った。
千重子は黙っていた。房々と縮れてる髪の毛の中で耳が真赤になった。
「菅原君が帰って来たと聞いたら、すぐにも飛んで来るかと思って、待っていたよ。」
「意地わる。」
千重子は睨むまねをしたが、瞬間、その眼にいっぱい涙がわき、立ち上ってくるりと向うをむき、こんどは、倒れるように北村の胸に倚りかかってきた。そしてそこに顔を隠して泣いた。
「どうしたんだい。何かあったのかい。」
千重子は頭を振った。暫くして、顔を挙げ、極りわるそうに微笑んだ。
「ごめんなさい。」
「まあいいさ、飲もう。」
千重子が熱い銚子を二本いっしょに持って来ると、北村は手酌でしきりに猪口を重ねながら、菅原洋平のことを話した。彼の旅行のこと、帰って来てからのこと、新居のことなど……だが実は、北村もよくは知らないのである。
「あの天神下の家に菅原君が住むようになろうとは、これは奇縁だね。」
それについては、千重子は何の興味も持たないらしかった。その家屋の様子も全然知らないのである。その代り彼女は、周組南一家のことをいろいろ尋ねた。だがこれについては、紹興の店以外、北村は殆んど知るところがないのである。