Japanische Klassiker mit Furigana
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りょうや
良夜
饗庭 篁村
Lesen Sie 良夜 (りょうや) von 饗庭 篁村 (あえばこうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.173 Zeichen · 16 Bildschirme
月あれども地上の光天をかすめて無きが如く、来往の船は自ら点す燈におのが形を示し、棹に砕けてちらめく火影櫓行く跡に白く引く波、見る者として皆な暑さを忘るる物なるに、まして川風の肌に心地よき、汗に濡れたる単衣をここに始めて乾かしたり。紅蓮の魚の仏手に掏い出されて無熱池に放されたるように我身ながら快よく思われて、造化広大の恩人も木も石も金もともに燬くるかと疑わるる炎暑の候にまたかくの如く無尽の涼味を貯えて人の取るに任すとは有難き事なりと、古人の作中、得意の詩や歌を誦するともなく謡うともなくうめきながら欄干を撫でつつ歩むともなく彳むともなく立戻おり居るに、往来の人はいぶかしみ、しばしば見かえりて何か詞をかけんとして思いかえして行く老人あり、振りかえりながら「死して再び花は咲かず」と俚歌を低声に唄うて暗に死をとどむる如く誡め行く職人もあり。老婆などはわざわざ立かえりて、「お前さんそこにそうよっかかって居ては危のうございますよ、危ないことをするものではありませんよ」と諄々と諭さるる深切。さては我をこの橋上より身を投ずる者と思いてかくねんごろには言わるるよと心付きて恥かしく、人の来るを見れば歩きてその疑いを避くるこの心遣い出来てより、涼しさ元のごとくならず。