Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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えんしょ

艶書

山本 周五郎

Lesen Sie 艶書 (えんしょ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 25.027 Zeichen · 50 Bildschirme

Aozora Bunko

彼は忠也に隠し子のあることを知っていた。

忠也が新柳町の花街で遊ぶことはまえに記したが、そこの「稲村」という料亭の娘が忠也の子を産み、すでに三つになるし、笠井家から月々の手当がいっているということを、出三郎は知っていたのである。

――知らずに嫁にいって、あとでわかったら、七重はどんなに苦しむだろう。

そう思うと出三郎にはたまらなかった。

「話さなければならない」と彼は自分に云った、「そのうえで七重が嫁にゆくならいいが、知らないままでやっては可哀そうだ、おれがその事実を知っていて話さないという法はない」

彼はそう決心した。他人の秘事をもらすことがいいか悪いか、そんなことは考えもしなかった。そしてすぐに、七重に会うために庭へ出ていった。

かなり久しく呼びあわなかったので、鳩の鳴きまねにも疎くなったものか、七重が出て来たのは三日めのことであった。それはけぶるような五月雨の午後で、新村邸の梅林には、雨にぬれたこまかい葉蔭に、うれた梅の実が点々と眺められた。七重は菖蒲の模様の着物を着て、素足に高足駄をはき、傘の蔭から微笑しながらこっちへ来た。出三郎は身ぶるいをした。