Japanische Klassiker mit Furigana
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えんしょ
艶書
山本 周五郎
Lesen Sie 艶書 (えんしょ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 25.027 Zeichen · 50 Bildschirme
「はい、去年の六月でございました」
「なにが原因ですか」
「表むきは子が産まれないからというのですけれど、本当はよそに隠し子がおりましたの」と七重は寂しげに頬笑んだ、「笠井がよその方に産ませた男のお子で、わたくしが嫁にまいるずっと以前からの方でしょう、そのお子がもう十歳にもなるとわかったものですから」
「笠井がそう云ったんですね」
「いいえおかあさまからうかがいました」
そう聞いたとき、出三郎はふとたあちゃんの言葉を思いだした。「おばあさまはにらむからこわい」という言葉を。
「わたくしはじめから笠井の御両親にはお気にいられていないようでしたの」七重は云った、「ことにおかあさまには、わたくしのすることがなにもかもお気に召さないようで、……それで隠し子のことなどをお話しなすったのでしょう、わたくしもそれで辛抱がきれましたから、お願いして実家へ戻ることにいたしましたの」
「あなたのほうから望んだのですね」
「実家では兄も母も反対でしたけれど、わたくしそれなら死んでしまうからと申しましたわ」七重はこう云って微笑した。すると唇の両端にえくぼがよれた。
「笠井があんなことになって、今では兄や母もよく戻ったなんて申します」