Japanische Klassiker mit Furigana
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はなもかたなも
花も刀も
山本 周五郎
Lesen Sie 花も刀も (はなもかたなも) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 89.364 Zeichen · 178 Bildschirme
彼はそのことを思いだした。
彼の姿を見て、それを知らせに幸坊が走っていったこと、座蒲団に人のぬくみが残っていたこと、そして勝手に皿小鉢や燗徳利があり、それがすぐあとで片づけられたことなど、――彼はそのときは深く疑わなかった。近所の女房でも呼んで奢ったのだろう、ぐらいにしか考えなかった。
「なにかあったんだな」と、幹太郎は呟いた、「富原老は確信ありげだった、証人を同伴する必要もないと云った、たしかに、そう云うだけの根拠があったに相違ない」
彼はおちつかなくなり、気持が苛立ってきた。
駕籠をいそがせたが、高輪にかかると疲れたようすなので、辻駕籠をみつけて、乗り替え、駄賃を増すから、「とばしてくれ」と云った。時刻はまだ九時まえだろう。
一丁ばかり手前で駕籠をおり、もし、また幸坊が外で遊んでいはしないかと、用心しながら、できるだけ家並の軒下を伝うようにして、その横丁へ曲っていった。
横丁には遊んでいる子供もなく、表を閉めた家々の、窓の障子にうつる灯火の色が、まるで深夜ででもあるように、ひっそりと道に光を投げていた。
あたりは、そんなに静かなのに、彼の住居では賑やかに人声が聞えていた。