Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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めばえ

芽生

宮本 百合子

Lesen Sie 芽生 (めばえ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N3. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N3 · Mittel · moderne Kanji und Kana · 40.924 Zeichen · 81 Bildschirme

Aozora Bunko

女はそれには答えずに、

「来る時には随分満ちた気持で居たんだけど、今じゃもうはぬけの様になっちゃったんだもの……」

やるせない様に云って右の肩を一寸あげた。

「そんなに私をいじめるもんじゃないよ」

と低い声で云う男の口元を見た時、女の心の中には今までの後向になった気持にこっちを向かせるほど力のある一種のうるんだうれしさと悲しさとがこみあげて、のどのところでホッカリとあったかいまあるいかたまりになった。唇をかるくかんで女は男のかおを見入った。大変おだやかなゆとりのあるかおに見えて居て、その両わきにある耳の大きさと鼻の高さが気になって気になって、どうにも斯うにもしようのないほどであった。目の前にあるかおをすぐに両手で抱えて、胸におしつけてしまいそうな気持と何となくものぐさいようなものたりない様な気持がのどの一っかたまりの中でもみ合って女のかおは段々赤く目に涙がにじみ出して来た。

「たまらなくうれしくってたまらなくいやで――もうたまりゃしない――私は帰るサ、変になっちゃったから……」

ガサガサした声で自分から手をかたくにぎって、女は云いながら立ち上って、着物の上前をおはしょりのところで引っぱった。