Japanische Klassiker mit Furigana
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ちゃがゆのき
茶粥の記
矢田 津世子
Lesen Sie 茶粥の記 (ちゃがゆのき) von 矢田 津世子 (やだつせこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.568 Zeichen · 30 Bildschirme
文政六年の建立とあるが、老常夜燈の貫録は、その全身の深苔にはっきり見られるようだった。「霊泉禅寺」と大きな額が本堂の正面にかかっていた。閉じこめたままで幾日も過ぎているらしい。雨戸の隙間から覗くと、洩れ陽の射した畳が赤ちゃけて冷たく光り、御本尊は須弥壇の奥深くて、拝めなかった。
川に沿って引き返した。流れが早く透明だった。戸口毎に女衆がしゃがんで、菜っ葉を洗ったり米をといだりしていた。芹を摘んでいる子供もいた。
清子は久しぶりに後ろ手に組みながら、娘時代の友人たちを思い浮べた。そしてこれから先きの年々、姑と二人のささやかな暮しが今眼の前で始められたような気がするのだった。
「なんと、腹コの空くこと。おしよしくてなし」
姑は気まり悪そうに言いながらも、足を早めた。空気のいいのは薬だといい、けれどもこんなに腹コが空いては節米に適わぬとて笑うのだった。
「また、今朝もとろろよ。さっき、おかみさんが一生懸命で摺り粉木をまわしていましたよ」
「とろろに明けてとろろに暮れるだべしちえ」
二人はクツクツと笑いあった。
宿が間近かった。百姓家の戸口前に子供等が争って空罐の中へ手を突っ込んではミミズをつまみあげて、金網をのぞいていた。