Japanische Klassiker mit Furigana
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くさまくら
草枕
Lesen Sie 草枕 (くさまくら) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 84.485 Zeichen · 170 Bildschirme
と出来た。もう一返最初から読み直して見ると、ちょっと面白く読まれるが、どうも、自分が今しがた入った神境を写したものとすると、索然として物足りない。ついでだから、もう一首作って見ようかと、鉛筆を握ったまま、何の気もなしに、入口の方を見ると、襖を引いて、開け放った幅三尺の空間をちらりと、奇麗な影が通った。はてな。
余が眼を転じて、入口を見たときは、奇麗なものが、すでに引き開けた襖の影に半分かくれかけていた。しかもその姿は余が見ぬ前から、動いていたものらしく、はっと思う間に通り越した。余は詩をすてて入口を見守る。
一分と立たぬ間に、影は反対の方から、逆にあらわれて来た。振袖姿のすらりとした女が、音もせず、向う二階の椽側を寂然として歩行て行く。余は覚えず鉛筆を落して、鼻から吸いかけた息をぴたりと留めた。
花曇りの空が、刻一刻に天から、ずり落ちて、今や降ると待たれたる夕暮の欄干に、しとやかに行き、しとやかに帰る振袖の影は、余が座敷から六間の中庭を隔てて、重き空気のなかに蕭寥と見えつ、隠れつする。
女はもとより口も聞かぬ。傍目も触らぬ。椽に引く裾の音さえおのが耳に入らぬくらい静かに歩行いている。