Japanische Klassiker mit Furigana
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くさもみじ
荷風随筆集(下)
永井 荷風
Lesen Sie 荷風随筆集(下) (くさもみじ) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 30.512 Zeichen · 63 Bildschirme
引摺り上げる時風呂敷の間から、その結目を解くにも及ばず、書物が五、六冊畳の上へくずれ出したので、わたしは無造作に、
「君、拾円貸したまえ。」
番頭は例の如くわれわれをあくまで仕様のない坊ちゃんだというように、にやにや笑いながら、「駄目ですよ。いくらにもなりませんよ。」
「まあ、君、何冊あるか調べてから値をつけたまえ。」
「揃っていても駄目ですよ。全くのはなし、他のお客様ならお断りするんですが……。」
「一体いくらだよ。そんな意地の悪いことを言わないで。」
「そうですね。まア弐円がせいぜいという処でしょう。」
わたしと唖々子とは、最初拾円と大きく切出して置けば結局半分より安くなることはあるまいと思っていたので、暫く顔を見合せたまま何とも言う事ができなかった。殊に唖々子はこの夜この事を敢てするに至るまでの良心の苦痛と、途中人目を憚りつつ背負って来たその労力とが、合せて僅弐円にしかならないと聞いては、がっかりするのも無理はない。口に啣えた巻煙草のパイレートに火をつけることも忘れていたが、良久あって、
「おい。お願だからもうすこし貸してくれ。」
「この次、きっと入れ合せをするよ。