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Japanische Klassiker mit Furigana

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きくづきよ

菊月夜

山本 周五郎

Lesen Sie 菊月夜 (きくづきよ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.129 Zeichen · 32 Bildschirme

Aozora Bunko

……ところが去年の春のはじめだった。権太夫は城中でとつぜん発狂し、抜刀して奥殿へ踏みこもうとした。おどろいて制止しようとする小姓組の者をも二人ばかり傷つけたうえ、なお暴れるのでやむなくとり詰めて討ち果してしまった。重臣の高力忠左衛門は、ただちに老職評定をひらき、即決で『死体とり捨て』『遺族放逐』という処分をきめた。そのとき藩主の酒井忠義はまだ幼少で江戸屋敷にいたから、いちおう御裁可を待つべきではないかという者もあったが、高力忠左衛門が即決を主張してやまぬため、処分はその場できめられてしまった。……忠左衛門は先代摂津守忠当の寵臣で、現在なお権勢ならぶ者なき位置にあったし、また藩法にも、――城中で抜刀狼藉した場合は重科、家族は放逐という明らかな掟があるので、誰にも即決に反対することはできなかったのである。

「……御裁決を聞くとすぐ」と母親はいたましげに続けた。「お父上が松谷どのへ使をおやりになったのです。けれどもそのときもう家はすっかり片付いていて、小房どの親子はいずれかへたち退いたあとでした」

「…………」

「そしてその夜でしたよ、使の者が手紙を届けて来たのですが、――思いがけぬできごとのため婚約も果せぬ始末となった、縁談は無きものにしたいから、そういう文面だったのです」