Japanische Klassiker mit Furigana
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おちてゆくせかい
落ちてゆく世界
久坂 葉子
Lesen Sie 落ちてゆく世界 (おちてゆくせかい) von 久坂 葉子 (くさかようこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.725 Zeichen · 40 Bildschirme
夏のこととは、野球場でアイスキャンデーをうりあるくとはりきって、いよいよ、そのアルバイトの初めの日、いさんで西宮へ出かけた信二郎は、からのキャンデー箱を肩からつけて二三歩あるいたなり、もう動けなかったという話であります。「それみろ」父は申しました。信二郎は今年新制大学にはいりました。一人前に角帽をかぶっているのに、末子で、いつまでたっても一人でどんどん事をはこぶことが出来ません。
「母様にはときふせてあげましょう。父様は、金城鉄壁だけれど、何とかなるでしょう」
「ダンケ。頼むよ」
父が、嗅薬を用いたとみえて、きなくさい臭いが家内中にただよいました。それから私は信二郎と二人で、さいころを始めました。私が勝てば元々で、弟にまければ、先刻の煙草一本まきあげられるのです。私は何のことはない、損なことですけれど、つまりさいころを転がすこと自体が面白いのです。
あくる日――
私は兄の見舞いに病院へ行きました。たった一人の兄は信一といって大学に通っておりましたが、戦争中の無理が原因となって、一昨年の夏、肺結核のため入院したのでした。要心深い細心な人ですから、入院して以来、一歩も外へ出ずに、じっと養生しているのでしたけれど、この病気は簡単にはなおらず、今も気胸をつづけて入院しているのでした。