Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おちばいき

落ち梅記

山本 周五郎

Lesen Sie 落ち梅記 (おちばいき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 30.748 Zeichen · 61 Bildschirme

Aozora Bunko

彼女とはそのまえ寺の法会のときにいちど会った。遠くから目礼を交わしただけであるが、躯つきにも面ざしにも思ったほど変りがなく、やはりおっとりとなごやかな眼で微笑しているようにみえた。――それが彼の居間へはいって来て、相対して坐ったのを見ると、まったく裏切られたような感じがした。まず驚くほど痩せていた、薄く化粧をしているらしいが、顔色もわるく、窶れてみえ、まるい二重顎だったのが、こけたように尖っていた。

「少しお痩せになったようですね」挨拶が済んでから金之助はそうきいた、「どこか具合でもお悪いのですか」

「いいえそんなことはございません、躯だけはずっと丈夫でございますわ」

「――お躯だけはね」

こう云われて由利江はふとこちらへ眼をあげた、しかしすぐに俯眼になり、膝の上の手をそっと握り合せた。いじらしいほど寂しげな姿である。どこへでも幸福を持ってゆくと云われた由利江、身のまわりにいつも和やかに温たかい雰囲気をつけていた由利江、見るほどの者に生きることの悦びを感じさせた、あの由利江はどこへ無くなってしまったのか。――こんな寂しげな頼りない姿になるまでに、どれほど苦しい悲しい経験をしたことであろう。