Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おちばいき

落ち梅記

山本 周五郎

Lesen Sie 落ち梅記 (おちばいき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 30.748 Zeichen · 61 Bildschirme

Aozora Bunko

それから後はさらに親しさを増したというようすで、金之助の部屋へ来てはよくいろいろな話をした。彼は祖母から貰った青銅の手鏡を持っている、さしわたし四寸ばかりの八花形の漢鏡で、日光を反射させると竜紋が現われる。珍しいので友達なかまにずいぶん欲しがられた。いつも桐の小箱へ入れて床間の違棚に載せてあったが、由利江もそれをみつけて、来るたびに日光を映してはよろこんでいた。そのようすが余りいじらしくみえたので、欲しければあげようと云ったところ、由利江はびっくりしたように眼をみはってこちらを見た。

――本当に下さいますの。

――本当にあげるよ。

こう云うと、ちょっと首を傾げて考えるふうだったが、ふと頬を赤くし、しさいらしい口ぶりで静かにこう云った。

――では由利がもっと大きくなってから頂きますわ。それまでどこかへ納っておいて下さいまし。

そしてすぐに袱紗で包み、箱へ入れて、大切そうに紐をかけてしまった。それはもう夏も終りに近いじぶんだったと思うが、たぶんその前後のことだろう。庭から来て、いつものように広縁へ腰を掛けて、暫くじっと植込のほうを眺めていた。ふと溜息をつくようすなので、金之助がどうかしたかときくと、彼女はおとなびた表情で次のように答えた。