Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
おちむしゃにっき
落武者日記
山本 周五郎
Lesen Sie 落武者日記 (おちむしゃにっき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.460 Zeichen · 23 Bildschirme
……御主君は無事なのだ、どこかにまだ生き延びて在すのだ、……そう思うと、一瞬まえまでの絶望の中に、微かながら一筋の光がさしてくるのを感じた。
「いかにも」
と彼は声高く答えた。
「主君、治部少輔の殿の御在所は知っております」
「それを聞きたいのじゃ」
「……ほう」
「五日や十日生き延びられようとて、しょせん覆水は盆にかえらぬ、治部どのの名のためにも、早く始末をつけるほうがよかろうではないか。……治部どのはどこにおらるるの」
「さぞお知りになりたいでございましょうな」
「聞かずにはおかぬじゃ」
「さて、……どうありましょうか」
老人の細い眼が、そのとき、かすかにきらりと光を放った。……そして、皺をたたんだ丸い指で、静かに膝を撫でながら、
「あれを見い、あの幕の側にあるものを」
と右手を顎でしゃくった。……そこには、一見して拷問道具と分る物が、乾いた血の痕をどす黒く滲ませて、並んでいた。祐八郎はつくづくと見てから振返った。
「責め道具でございますな」
「体は弱いものじゃ」
家康は柔かい撫でるような声で云った。
「心はどのように固くとも、人間の体が苦痛に堪えられる限度は知れたもの、今までに何十人となくその証拠を見せている、……どうじゃ、試してみるかの」