Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おちぼひろい

落穂拾い・犬の生活

小山 清

Lesen Sie 落穂拾い・犬の生活 (おちぼひろい) von 小山 清 (こやまきよし) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 239.741 Zeichen · 486 Bildschirme

Aozora Bunko

父はいつも黙っていた。――「そんなに睨みつけていたら本に孔があいてしまいますよ。」そう云ってイエは笑った。はでな日傘を差していてそれをくるくる廻しながら。私はその頃瞬間ふと憑かれたようにものに見入ってしまうことがよくあったのだ。映画館の陳列の写真に見入って放心している隙にスリに袂を切られたこともある。いつからとなくそういう孤独な習癖が身に着いてしまっていた。偶々私のそんな姿を見かけて、でもよく声をかけてくれた……。イエは少し肥ったようだった。震災後田舎から出てきたときの野の匂いなど、もうイエの身には感ぜられなかった。変らず涼しい眼をしていたが、まえにはなかった勝気な強い光りがあった。笑うと金歯を入れているのがちらと覗いた。

「清さんはいま、何年生ですか?」

私が笑いだしたものだから、イエは不審そうに私を見た。

「僕、落第しちゃったんだ。」

私は思い切って云った。イエに対しては云い辛く、またイエだからその云い辛いことが云える、そんな気持だった。私が笑い顔でいるものだから、イエも笑ったが、すぐ眉を顰めて、

「躯が悪かったんですか?」

私は否定した。私は生れつき頑健でそれまでほとんど病気などしたことがなかった。