Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おちぼひろい

落穂拾い・犬の生活

小山 清

Lesen Sie 落穂拾い・犬の生活 (おちぼひろい) von 小山 清 (こやまきよし) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 239.741 Zeichen · 486 Bildschirme

Aozora Bunko

順吉には父親の記憶は少しもない。物心がついた頃には母親と自分だけしかいなかった。母親からは父親は順吉が孩児の頃に死んだように聞かされていた。けれども順吉は母親に連れられて、父親の墓参りなどしたことは一度もなかった。順吉の姓は母親の姓なのである。順吉が自分の出生のこと身の上のことを了解したのは、母親の死後だいぶ立ってからであった。十八の年には洗張屋に奉公していたが、兄分に当るのが、寝物語に順吉の話を聞いて、「なんだ、それじゃ、お前、父なし児じゃねえか。」と云った。順吉はいきなり顔をはたかれたような気がした。よくはわからなかったが、単に父親が死んでいない者のことを云うのとは違う、もっと恥ずかしい身の上のことだという感じが、そのとき強く頭に染み込んだ。齢にしてはまたそういう境遇の者としては、少し疎すぎると人は云うであろうが、順吉は生れつきそんな子供であった。兄分の男は「可哀そうだなあ。」と吐き出すように云って、順吉の顔を見据えながら「おやじのことを思うかい?」と訊いた。順吉はかぶりをふった。父親のことなど思ったこともない。だいぶ立って頭の中に事実がはっきり映るようになったとき、順吉にはただ母親が不憫に思われた。