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Japanische Klassiker mit Furigana

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らくらいのあと

落雷のあと

豊島 与志雄

Lesen Sie 落雷のあと (らくらいのあと) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.072 Zeichen · 14 Bildschirme

Aozora Bunko

ただ不思議なことに、勤務時間だけは厳格でした。その時間中、会社の中に拘禁されてるのと同じでした。読書とひそかな無駄話が時間つぶしでした。小さな文庫がありまして、政治経済文学などの書物が雑居していました。軍国主義の書物もまだそのまま残っており、童話の書物も交っていました。社員たちは勝手に濫読し、或は無意味にただ眼を活字に曝しました。それらの書物のなかに、立川一郎は読みたいものも見出さず、少数の古雑誌にも倦きると、新聞で時間をつぶしました。新聞紙の隅から隅まで広告の最後の一行まで、丹念に見てゆくと、僅か二頁の新聞でも相当な時間がかかりました。

会社がこれからどうなるものやら、そのようなことは誰にも分りませんでした。ただそこで無為な時間をつぶしさえすれば、多少とも生活の足しになるのでした。労務員の方には、仕事はないのに組合だけ出来ていましたが、事務員の方にはそれさえありませんでした。空白な日々が同じように過ぎてゆきました。屈辱なほどの佗びしい生活でした。

その上、秘書主任の三宅弘子に、立川一郎は特別な引け目を感じていました。眼鼻立の尋常ないくらか長めの顔が、すらりとした体躯に比べて、へんに大きく見える女で、戦時中も終戦後も、いつも香水の匂いをさせていました。