Japanische Klassiker mit Furigana
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あおじろいつき
蒼白い月
徳田 秋声
Lesen Sie 蒼白い月 (あおじろいつき) von 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.440 Zeichen · 19 Bildschirme
「初めここへ来たころは、私もそうでした。みんな広大な土地をそれからそれへと買い取って、立派な家を建てますからな。けれど、このごろは何とも思いません。そうやきもきしてもしかたがありませんよって。私たちは今基礎工事中です。金をちびちびためようとは思いません。できるのは一時です」彼はいくらか興奮したような声で言った。
私たちは河原ぞいの道路をあるいていた。河原も道路も蒼白い月影を浴びて、真白に輝いていた。対岸の黒い松原蔭に、灯影がちらほら見えた。道路の傍には松の生い茂った崖が際限もなく続いていた。そしてその裾に深い叢があった。月見草がさいていた。
「これから夏になると、それあ月がいいですぜ」桂三郎はそう言って叢のなかへ入って跪坐んだ。
で、私も青草の中へ踏みこんで、株に腰をおろした。淡い月影が、白々と二人の額を照していた。どこにも人影がみえなかった。対岸のどの家もしんとしていた。犬の声さえ聞こえなかった。もちろん涸れた川には流れの音のあるはずもなかった。
「わたしはこの草の中から、月を見ているのが好きですよ」彼は彼自身のもっている唯一の詩的興趣を披瀝するように言った。