Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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れんげず

蓮花図

宮本 百合子

Lesen Sie 蓮花図 (れんげず) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.591 Zeichen · 6 Bildschirme

Aozora Bunko

入梅があけると、空家の庭に苔がつき、めっきり青草が伸びた。雨戸はしまったままだ。

夏になったので、何処かの子供が、空地を見つける子供の本能で早速その叢へ躍り込んで来た。豌豆の手に立ててあった細い竹ぎれを振廻す男の児の裸の腹。

「アラ! いた、いた」

草の葉を掻き分け、見えたり隠れたりする小娘の赤い兵児帯。――

子供の心にも、白々と雨戸のしまった空家は、叢が深ければ深いだけ、フッと四辺が森閑とした時変な気持を起させるのか、荒庭は直放棄されてしまった。

もう子供の声もしない。草がのびる。草ばかり夜昼繁茂する。夜半、目が醒める。微に草の葉のすれ合う音がする。月を吹く風か? いやあの青草のまた伸び上る戦ぎであろう。菁は凄に通ずると感じながらその戦ぎを聞いた。

その空家の叢の蔭に、いつからとなく一条草が踏みつけられた。そこから白黒斑の雄犬が一匹私共の家へ来る。自由な、親密な感情を持ったこの動物は、主人が、人夫を入れて物干杙を引き抜かせて去っても、私共が彼を呼んだ声を覚えていると見えて、来るのだ。尤も、これには一つ話がある。

まだ春も夜寒な頃、十時過ぎて或る印刷所の使が玄関に来た。