Japanische Klassiker mit Furigana
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そばのはなのころ
蕎麦の花の頃
李 孝石
Lesen Sie 蕎麦の花の頃 (そばのはなのころ) von 李 孝石 (いひょそく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.494 Zeichen · 16 Bildschirme
――それが違うだよ。何もかもはっきり言ってくれねえから判んねえが、蓬坪とだけは聞いている。
――蓬坪。で、その生みのてておやは、何ていう苗字だよ。
――不覚にも、聞いておらねえ。
そ、そうか、とそそかしく呟きながら眼をしょぼしょぼさせているうち、許生員は粗忽にも足を滑らしてしまった。前につんのめったと思う間に、体ごとさらわれてしまった。くだけ無駄で、童伊がいけねえっと近よってきた時には、早くも数間流されていた。着物ごとぬれると、犬ころよりもみじめだった。童伊は水の中で易々と大人をおぶることが出来た。びしょ濡れとはいえ、痩せぎすの体は背中に軽かった。
――こねえにまでして貰ってすまねえ。儂今日はどうかしてるだよ。
――なに、しっかりなせえ。大丈夫だい。
――で、おふくろというなあ、父を探してはおらねえかよ、
――生涯一度会いたいとは云ってるだが。
――いま何処にいる。
――義父とももう別れて、堤川にいるんだが、秋までに蓬坪へ連れてきてやろうと思うんだ。なに、まめに働けば何とかやってける。
――殊勝な心掛けだ。秋までにね。
童伊のたのもしい背中を、骨にしみて温く感じた。