Japanische Klassiker mit Furigana
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あざみ
薊
山本 周五郎
Lesen Sie 薊 (あざみ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.800 Zeichen · 32 Bildschirme
「わたくしでかけなければなりません」ゆきをは立ちあがった、「もう茶会の時刻です、みなさんが待っていますから」
「待て、まだ話すことがある」
「わたくしにはもう申上げることはございません」と云って、ゆきをは静かに帯を撫で、髪へそっと手をやりながら良人を見た、「お話しするだけのことはお話し致しました、これ以上なにをお答えしていいかわかりませんし、わたくしもうすっかり疲れてしまいました」
「ゆくなら、本心をうちあけてゆけ」
「本心ですって」ゆきをは微笑した、「――申上げてもわかって頂けませんでしょう」
ゆきをは袂からなにかを取出して、そっと机の上に置いた。それは紫色の花をつけた、一本の薊であった。細い茎に葉が三四枚、冬のことで花も小さいが、その鮮やかな紫色は、机の上でみずみずしく、際立って見えた。ゆきをはすらりと背を伸ばし、(いつもの)ふしぎに屹とした身ぶりで、縁側のほうへ歩きだした。銕太郎は惘然とした眼つきで、妻が机の上へ薊の花を置く動作を見、そして、縁側のほうへ出てゆくのを見た。
「ゆきを」と叫んで彼は立ちあがった、「待てゆきを」
「兄さん」と佐久馬が呼びかけた。