Japanische Klassiker mit Furigana
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とうくろうのしま
藤九郎の島
久生 十蘭
Lesen Sie 藤九郎の島 (とうくろうのしま) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.765 Zeichen · 19 Bildschirme
待ちに待った船は来たが、便り船にはあらで、流れ船だった。それも眼もあてられないようなひどい破船で、よくも今日まで凌いできたと思うばかりの体裁だった。乗組みはみな半死の病人で、水夫の源右衛門は頭まで腫れあがって眼も開けられず、陸地にあがったというばかりのことで、三日ほど後、息をひきとった。
島方の三人は、重湯をとるやら粥をつくるやら、その間に藜の葉の摺餌をこしらえ、藤九郎の卵を吸わせ、一日中、病人の介抱に忙殺された。いっそ張合いができ、生きていくことがたのしくなったが、そうまでした介抱の甲斐もなく、八月に長六が、九月に甚兵衛が、「かたじけなかった」と、虫のような声で、三人に礼をいって死んだ。船頭の長平だけは、やっとのことで持ちなおしたが、すっかり気落ちして、海の色を見るのも懶くなったらしく、岩穴の奥にひっこんで、念仏ばかりとなえていた。
享保十八年(十四年目)の正月早々、また流れ船がついた。大阪の五百石積みで、船頭儀右衛門以下十二人の乗組みで武蔵の江戸川を出帆し、下総の犬吠岬まで走ったところで西北の風に追い落され、これも五十日あまり漂流するうちに、形のないまでに船を壊し、今日か明日か、海の底に沈んで、みな魚の餌食になるものと覚悟していたところ、はしなくも、身一つでここの島根に着いたと、船頭の儀右衛門が、