Japanische Klassiker mit Furigana
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とうじゅうろうのこい
藤十郎の恋・恩讐の彼方に
菊池 寛
Lesen Sie 藤十郎の恋・恩讐の彼方に (とうじゅうろうのこい) von 菊池 寛 (きくちかん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 37.146 Zeichen · 74 Bildschirme
彼の舞台を見た役者達までも、
「江戸の少長は、評判倒れの御仁じゃ、尤も江戸と京とでは評判の目安も違うほどに江戸の名人は、京の上手にも及ばぬものじゃ。所詮物真似狂言は都のものと極わまった」と、勝誇るように云い振れた。が、七三郎を譏しる噂が、藤十郎の耳に入ると、彼は眉を顰めながら、
「われらの見るところは、また別じゃ。少長どのは、まことに至芸のお人じゃ。われらには、怖ろしい大敵じゃ」と、只一人世評を斥けたのであった。
二
果して藤十郎の評価は、狂っていなかった。顔見世狂言にひどい不評を招いた中村七三郎は、年が改まると初春の狂言に、『傾城浅間ヶ嶽』を出して、巴之丞の役に扮した。七三郎の巴之丞の評判は、すさまじいばかりであった。
藤十郎は、得意の夕霧伊左衛門を出して、これに対抗した。二人の名優が、舞台の上の競争は、都の人々の心を湧き立たせるに十分であった。が新しき物を追うのは、人心の常である。口性なき京童は、
「藤十郎どのの伊左衛門は、いかにも見事じゃ、が、われらは幾度見たか数えられぬ程じゃ。去年の弥生狂言も慥か伊左衛門じゃ。もう伊左衛門には堪能いたしておるわ。