Japanische Klassiker mit Furigana
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とうじゅうろうのこい
藤十郎の恋・恩讐の彼方に
菊池 寛
Lesen Sie 藤十郎の恋・恩讐の彼方に (とうじゅうろうのこい) von 菊池 寛 (きくちかん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 37.146 Zeichen · 74 Bildschirme
すると、その遊び人のような男が、
『どうです、親方。花川戸の辰親分の内で、いい賭場が開いていますぜ』と云うじゃありませんか。これで見ると、染之助という男は、こんな男を相手に賭博を打つような身持の悪い男だと分りました。私は、悪夢が醒めたような心持で、怖しいもの汚らわしいものから、逃れるように逃げ帰ったのです」
「まあ、それでよかった。もし、お祖母さんが、そんな役者に騙されでもしたら、綾子なんかはどうなっていたかも分らない」と、私はホッとしたように云いました。
「ところが、まだ後日譚があるのですよ。……その日、私は家へ帰ってから、つくづく考えたのです。私が恋しいと思っていたのは、染之助と云うような役者ではなく、染之助が扮している三浦之介とか勝頼とか、重次郎とか、維盛とか、ああした今の世には生きていない、美しい凛々しい人達ではなかったかと、そう思うと、我ながら合点が行ったように思うのでした。お祖父さんに、散々苛められて世の中の男が、嫌になった私は、そう云う舞台の上に出て来る、昔の美しい男達を恋していたのかも分らなかったのよ。私は、そう思うと、素顔の染之助の姿が堪らない程嫌になって、日参のように守田座へ行ったのが、気恥しくなり、それきり守田座へは足踏みしなくなったのです」