Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
とうじゅうろうのこい
藤十郎の恋・恩讐の彼方に
菊池 寛
Lesen Sie 藤十郎の恋・恩讐の彼方に (とうじゅうろうのこい) von 菊池 寛 (きくちかん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 37.146 Zeichen · 74 Bildschirme
から見詰められる事が胸がわくわくする程嬉しかったのですよ。私も、信乃から見詰められる度に、じっと見返したり、時にはニッコリと笑って見せたり、恋人から見詰められたと同じように、うっとりとなっていたのです。
やがて、幕が下ってから、手水を使いに廊下へ出ると、気の付かない間に、私を追いかけて来たらしく私の用をしていた出方が、
『もし奥様、ちょっと』と云うじゃありませんか。元来私は後家暮しはしていたものの、髪を切らないばかりでなく、勝山に結ったり文金の高島田に結ったりしている上、それで芝居に出這入するようになってからは、随分意気な身装をしていたから町家の奥様とも見えれば、旗本のお妾さんのようにも見えたのでしょうよ。私が、
『何か用かい』と立ち止って聞くと、出方は声を低めながら、
『あの染之助さんが、是非一寸奥さんにお目にかかりたいと云うのですが、……』と、モジモジ揉手をしながら云うのでした。もし、その時、出方が『あの犬塚信乃さんが』とでも云ったら、私は二つ返事で会いに行ったかも、知れなかったのだけれど、染之助と云うと、直ぐ馬道であった色の蒼黒い小男の顔が、アリアリと眼の前に浮んで来て、逢う気はしなかったのですよ。