Japanische Klassiker mit Furigana
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とうじゅうろうのこい
藤十郎の恋・恩讐の彼方に
菊池 寛
Lesen Sie 藤十郎の恋・恩讐の彼方に (とうじゅうろうのこい) von 菊池 寛 (きくちかん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 37.146 Zeichen · 74 Bildschirme
私はこの頃では、貴女のお眸の謎に苦しめられない日はなくなりました。それは、恋の眸ではないのか、ただ上部だけで私の心を悩し焼きつくしても、その底には少しも温味も慈悲もない偽のまどわしの眸であったのかと、私は思い迷うようになりました。私は、この頃では貴女に見詰められることが段々苦しくなりました。貴女のお眸の謎が、私の心にも身にも、堪えられないほど、重々しくヒシヒシと懸って来るのです。私は一日もこの重さに堪えられなくなりました。ところが、今度思いがけなく一座が、京の方へ上る事になりました。段々、出立の日が近づいて来るのであります。私は江戸に深い執着も持っていませんが、ただ貴女のお眸の謎を――貴女の本当のお心持を――解かないで、江戸を去るのが、如何にも心残りであります。今まで、私の舞台をあれほど、見物して下さったお情に、ただ一度でもよいから逢って下さいまし。そして、貴女のお口から、貴女の本当のお心を話して下さいまし。私は、貴女のお口から、お前を愛していたと、云う言葉だけを聞けば、私はそのお言葉を、何よりの餞別として、江戸を去る積りであります。又、貴女のお口から、お前を愛してはいなかった、と云うお言葉を聞いても私はやっぱり、何よりの餞別として、江戸を去りたいと思うのです。