Japanische Klassiker mit Furigana
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とうそんのこせい
藤村の個性
和辻 哲郎
Lesen Sie 藤村の個性 (とうそんのこせい) von 和辻 哲郎 (わつじてつろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.764 Zeichen · 14 Bildschirme
が出始めた時分に、主人公が女主人公の妊娠を知って急に苦しみ始める個所を読んで、それから先を読み続けるのをやめた一人である。世間に知れるという怖れが主人公の苦しみの原因であって、初めに女主人公と関係したことは何の苦しみをもひき起こしていないように見えたからである。この点はその後ゆっくりこの作を読み返してみても、やはりそうだと思った。最初関係するところは非常に注意深く伏せてあった。従ってこの作の主人公は、世間の思わくの前に苦しんでいるのであって、おのれの良心の前に苦しんでいるのではない。もし『菊と刀』の著者がこの作を読んだのであったならば、この個所を有名な証拠として引用したであろう。
が、そこにこそ問題があるのであることを、私は久しい間気づかなかった。世間の思わくの前に苦しむのであって、自分の良心の前に苦しむのでない、と言われ得るほど、他人の気を兼ねる習癖が、作者藤村の個性にこびりついていればこそ、藤村は『新生』のために悪戦苦闘したのである。少年時代以来の藤村の苦労を、作品を通じて通観し得たときに、私にはやっとこのことがわかった。この苦労が次の苦労を生んだのである。