Japanische Klassiker mit Furigana
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やぶおとし
藪落し
山本 周五郎
Lesen Sie 藪落し (やぶおとし) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.118 Zeichen · 14 Bildschirme
――藪落しだ。
そう思ったとき、ふいに勘三郎の体は激しくどこかへ落込んだ。
彼は落ちたまましばらくじっとしていたが、やがて静かに顔をあげてみた、そこは二坪ばかりの窪地で、頭の上へはみっしりと金竹が生いかぶさっている、断崖まで滑らずにすんだのだ。
――助かったのか。
勘三郎はほっとして半身を起した、そのとき彼は笹の葉を透して落ちてくる光の中に思いがけぬ物をみつけだした。彼は身を起しかけたままそこにいすくんだ。それからずいぶん長いことしておそるおそる手を伸ばし、そっと窪地の岩壁を撫でてみた。うすい光を含んで葡萄色に光る紫水晶が露出しているのである。勘三郎の手はぶるぶる顫えながら、六角結晶の尖端を次から次へと撫で廻した。
――お豊……お豊……。
彼はいきなりそう叫びながら、自分の体をそこへ投出して泣きはじめた。何十年ものあいだに、すっかり忘れていた妻の顔が、痛いほど鋭く思い出されたのだ。
――何になるんだ、何になるんだ、今ごろみつかったところで……、お豊。
勘三郎はうすくなった髪毛をかきむしり、拳で胸をうちながら泣いた、それから彼は起上って、そして革袋の中から金槌を取出し、岩壁に露出している美しい紫水晶の尖端を気狂いのように砕きはじめた。