Japanische Klassiker mit Furigana
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そせい
蘇生
豊島 与志雄
Lesen Sie 蘇生 (そせい) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.974 Zeichen · 31 Bildschirme
勿論その時の会話は思い出せなかったが、その会話の齎す気分はそのまま情景の中に籠っていた。而もそれが一定の距離を距てたためか、朗かな大気の中に包まれたように見えた。じっと見つめていると、薄暗い谷底から高い峯の頂を仰ぐような感じがした。ただその前後は茫漠として少しも見分けがつかなかった。
彼は一種の恍惚たる境に導かれていった。清らかな翼のうちに包まれて、静に高く高く昇ってゆくがような気がした。何処かで慶子が微笑んでいた。愛が微笑んで輝いていた。彼は空高く両手を差伸そうとした。
その時、一種の眩暈を彼は感じた。と、急に深い暗黒の淵の中に陥っていった。激しい加速度を只て墜落した。彼は思わず眼を開いた。
室の中にはただ電灯の明るみが澱んで、三人がじっと坐っていた。看護婦は何かの雑誌を膝の上に拡げていた。そして彼は初めて自分が蘇生したのであることを知った。然しそれは夢のような感じだった。凡てが静に落着いてはいたが、何処か不思議な点があった。
「慶子さん!」と彼は心のうちで叫んでみた。「嬉しい!」と何処かで声がした。それが彼の心の底までを貫いた。残酷とも悲痛とも憂愁とも知れない名状し難い感が、俄に彼のうちに上ってきた。