Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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きょこうのはる

虚構の春

太宰 治

Lesen Sie 虚構の春 (きょこうのはる) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 54.586 Zeichen · 108 Bildschirme

Aozora Bunko

御礼だけかいて、済まして居られる身分になれたら、それはすがすがしいことです。が、きいて頂きたいことがあるのだ、相談にのって頂きたい、力になって貰いたい、と手前勝手な台辞ばかりならべるのは、なんとも恥しい話です。あなたはカジョーに、ぼくの、経歴人物について、きいて下さったかも知れません。が、カジョーは多分、あいつは宣伝の好きな男だから……けれども、これはカジョーへの悪意ではありません。ぼくの自己弁解です。ぼくは幼年時、身体が弱くてジフテリヤや赤痢で二三度昏絶致しました。八つのとき『毛谷村六助』を買って貰ったのが、文学青年になりそめです。親爺はその頃妾を持っていたようです。いまぼくの愛しているお袋は男に脅迫されて箱根に駈落しました。お袋は新子と名を改めて復帰致しました。ぼくの物心ついた頃、親爺は貧乏官吏から一先ず息をつけていたのですが、肺病になり、一家を挙げて鎌倉に移りました。父はその昔、一世を驚倒せしめた、歴史家です。二十四歳にして新聞社長になり、株ですって、陋巷に史書をあさり、ペン一本の生活もしました。小説も書いたようです。大町桂月、福本日南等と交友あり、桂月を罵って、仙をてらう、と云いつつ、おのれも某伯、某男、某子等の知遇を受け、熱烈な皇室中心主義者、いっこくな官吏、孤高狷介、読書、追及、倦まざる史家