Japanische Klassiker mit Furigana
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ぐびじんそう
虞美人草
Lesen Sie 虞美人草 (ぐびじんそう) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 198.559 Zeichen · 401 Bildschirme
聞いていると、あの雨をつい昨日のように思う。ちらちらに昼の蛍と竹垣に滴る連に、朝から降って退屈だと阿父様がおっしゃる。繻子の袖口は手頸に滑りやすい。絹糸を細長く目に貫いたまま、針差の紅をぷつりと刺して立ち上がる。盛り上がる古桐の長い胴に、鮮かに眼を醒ませと、への字に渡す糸の数々を、幾度か抑えて、幾度か撥ねた。曲はたしか小督であった。狂う指の、憂き昼を、くちゃくちゃに揉みこなしたと思う頃、阿父様は御苦労と手ずから御茶を入れて下さった。京は春の、雨の、琴の京である。なかでも琴は京によう似合う。琴の好な自分は、やはり静かな京に住むが分である。古い京から抜けて来た身は、闇を破る烏の、飛び出して見て、そぞろ黒きに驚ろき、舞い戻らんとする夜はからりと明け離れたようなものである。こんな事なら琴の代りに洋琴でも習って置けば善かった。英語も昔のままで、今はおおかた忘れている。阿父は女にそんなものは必要がないとおっしゃる。先の世に住み古るしたる人を便りに、小野さんには、追いつく事も出来ぬように後れてしまった。住み古るした人の世はいずれ長い事はあるまい。古るい人に先だたれ、新らしい人に後れれば、今日を明日と、その日に数る命は、文も理も危い。