Japanische Klassiker mit Furigana
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ぐびじんそう
虞美人草
Lesen Sie 虞美人草 (ぐびじんそう) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 198.559 Zeichen · 401 Bildschirme
「御前のように楽の多いものは危ないよ」
藤尾は思わず黒髪に波を打たした。きっと見上げる上から兄は分ったかとやはり見下している。何事とも知らず「埃及の御代しろし召す人の最後ぞ、かくありてこそ」と云う句を明かに思い出す。
「小野は相変らず来るかい」
藤尾の眼は火打石を金槌の先で敲いたような火花を射る。構わぬ兄は
「来ないかい」と云う。
藤尾はぎりぎりと歯を噛んだ。兄は談話を控えた。しかし依然として柱に倚っている。
「兄さん」
「何だい」とまた見下す。
「あの金時計は、あなたには渡しません」
「おれに渡さなければ誰に渡す」
「当分私があずかって置きます」
「当分御前があずかる? それもよかろう。しかしあれは宗近にやる約束をしたから……」
「宗近さんに上げる時には私から上げます」
「御前から」と兄は少し顔を低くして妹の方へ眼を近寄せた。
「私から――ええ私から――私から誰かに上げます」と寄木の机に凭せた肘を跳ねて、すっくり立ち上がる。紺と、濃い黄と、木賊と海老茶の棒縞が、棒のごとく揃って立ち上がる。裾だけが四色の波のうねりを打って白足袋の鞐を隠す。
「そうか」
と兄は雲斎底の踵を見せて、向へ行ってしまった。