Japanische Klassiker mit Furigana
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ぐびじんそう
虞美人草
Lesen Sie 虞美人草 (ぐびじんそう) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 198.559 Zeichen · 401 Bildschirme
思うに小野さんは事実の判決を一寸に逃れる学士の亀であろう。亀は早晩首を出す。小野さんも今に封筒の裏を返すに違ない。
良しばらく眺めていると今度は掌がむず痒ゆくなる。一刻の安きを貪った後は、安き思を、なお安くするために、裏返して得心したくなる。小野さんは思い切って、封筒を机の上に逆に置いた。裏から井上孤堂の四字が明かにあらわれる。白い状袋に墨を惜しまず肉太に記した草字は、小野さんの眼に、針の先を並べて植えつけたように紙を離れて飛びついて来た。
小野さんは障らぬ神に祟なしと云う風で、両手を机から離す。ただ顔だけが机の上の手紙に向いている。しかし机と膝とは一尺の谷で縁が切れている。机から引き取った手は、ぐにゃりとして何だか肩から抜けて行きそうだ。
封を切ろうか、切るまいか。だれか来て封を切れと云えば切らぬ理由を説明して、ついでに自分も安心する。しかし人を屈伏させないととうてい自分も屈伏させる事が出来ない。あやふやな柔術使は、一度往来で人を抛げて見ないうちはどうも柔術家たる所以を自分に証明する道がない。弱い議論と弱い柔術は似たものである。小野さんは京都以来の友人がちょっと遊びに来てくれればいいと思った。