Japanische Klassiker mit Furigana
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にじのはし
虹の橋
久生 十蘭
Lesen Sie 虹の橋 (にじのはし) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.038 Zeichen · 30 Bildschirme
大阪に着くなり、行きあたりばったりに駅前の闇市のバラック街へ飛びこみ、食べるだけという条件で牛めし屋の下働きに住みこみ、鍋前に立つ合間に、声を嗄して客引きをした。
その店に二た月ほど居たが、十一月のすえ、客の立てこむ混雑にまぎれて売上げを笊ごと攫われた。身におぼえのないことだったが、ひっかかりになるのを恐れて、夜にならぬうちに逃げだした。
いくらか大阪の地理がわかるようになったので、千日前の十円喫茶を振りだしに、一杯屋の女中、モギリ、スーベニヤの売子、ダフ屋と、じぶんでも思いだせないほどめまぐるしく名と職を変え、南の盛り場を転々と流れ歩いた。おなじ店に二カ月以上は腰を据えないことにきめていたから、二十七年夏までの六年の間に、三十回近く職場を変えたことになる。
真山あさひの本籍は東京都板橋区板橋五ノ一〇一四の東京養育院で、更にもうすこし辿れば栃木の女囚刑務所が出てくる。なにか事件を起して、本籍地へ身元照会をされることを恐れるあまり、大阪に居た六年の間、あさひは、どういう軽犯罪にも触れないように、ひたすら身を慎しんできた。ぬきさしのならぬ母の古いレッテルと出生の素因が暴露すると、文句なしに犯人素質者のフレームに入れられ、それでもう、二進も三進も行かない身のつまりになるのだと思いこんでいた。