Japanische Klassiker mit Furigana
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ほたる
蛍
織田 作之助
Lesen Sie 蛍 (ほたる) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.875 Zeichen · 21 Bildschirme
そして、椙がなに思ってか寺田屋から姿を消してしまったのは、それから間もなくのことだったが、その行方をむなしく探しているうちに一年たち、ある寝苦しい夏の夜、登勢は遠くで聴える赤児の泣声が耳について、いつまでも眼が冴えた。生まれて十日目に死んだ妹のことを想いだしたためだろうか。ひとつには登勢はなぜか赤児の泣声が好きだった。父親も赤児の泣声ほどまじりけのない真剣なものはない。あの火のついたような声を聴いていると、しぜんに心がすんでくると言い言いしていたが、そんなむずかしいことは知らず、登勢は泣声が耳にはいると、ただわけもなく惹きつけられて、ちょうどあの黙々とした無心に身体を焦がしつづけている螢の火にじっと見入っている時と同じ気持になり、それは何か自分の指を噛んでしまいたいような自虐めいた快感であった……。
赤児の泣声はいつか消えようとせず、降るような夏の星空を火の粉のように飛んでいた。じっと聴きいっていた登勢はきゅうにはっと起き上ると、蚊帳の外へ出た。そして表へ出ると、はたして泣声は軒下の暗がりのなかにみつかった。捨てられているのかと抱いてあやすと、泣きやんで笑った。