Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ばんじん

蛮人

山本 周五郎

Lesen Sie 蛮人 (ばんじん) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.726 Zeichen · 13 Bildschirme

Aozora Bunko

「き――、この!」

灰煙の中を誰かがとんで行った。

「ど畜生、おれの……」

そういう声と同時に、どしんと誰かの倒れる響きが、ひどく迫った調子でひと言ふた言叫ぶと、烈しく咳き入るのが聞えた。そしてみんながそっちへ駆けつけたとき、ごつんという低い(ちょうどそれは土鍋を割るような)鈍い音につづいて、ああああと誰かの弱くひきのばされた悲鳴が起り、揺れ動く濃密な灰煙の中から一人の男がひどく咳きこみながら、鼠のように背をまるくして裏口のほうへとび出して行くのが見えた、外へ出てからもその男の咳く声は続いていたが、やがて荒地のほうへ消えて行ってしまった、――それは彼であった。

みんなは倒れている男を工場の外へ担ぎ出した、それは茂吉だった。裸の妻は担び出される良人の血だらけの頭を、双つの乳房のあいだに強くひき緊めながらぞっとするような声で泣き喚いた。草の上へ寝かされた茂吉は知覚を失った大きな瞳孔を瞠いたまま、

「あああ、ああああ」

と痴呆のように呻き続けた。

逃げた彼はすぐに捉った。

荒地の葦の中にひそんでいるところを、消防組の若者たちに狩出されたのである。彼はなんの抵抗もせずおとなしく繩をかけられ、そのまま駐在所へ曳いて行かれた。