Japanische Klassiker mit Furigana
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くも
蜘蛛
豊島 与志雄
Lesen Sie 蜘蛛 (くも) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 3.640 Zeichen · 8 Bildschirme
庭の木々の梢に、あちらこちらに、美事な大きな巣が張られていて、その真中に女郎蜘蛛が一匹ずつ、逆さにじっと構えこんで、背と腹の金筋を朝日に輝かしているのである。私は嬉しさの余り、妻や子供達を呼んだ。子供達は初めて見る女郎蜘蛛の不思議さと美しさに眼を見張った。美や神秘に対する子供の敏感さよ。だが、田舎の子供達は、女郎蜘蛛の巣で蝉取りの道具を拵えて遊ぶのである。
それから私は毎日、女郎蜘蛛を眺めて暮した。少しでも変な気配があれば、蜘蛛は巣を揺ぶって警戒する。蝿や蛾が巣にかかれば、一瞬の猶予もなく、飛びついて、くるくると白糸でからめて、巣の中央に持ち返り、暫く様子を窺ってから口をつける。生血を充分に吸う時その腹は大きくなり、食物の不足な時には心持ち小さくしぼんで見える。カステーラの屑を放ってやると、白糸でからめておいて食いつきはするが、やがてそのまま下に落してしまう。私は幾度も、蛾や甲虫などを生捕って投ってやった。青空の下にすかし見る蜘蛛の姿の、足が長く伸び腹が円くふくれて、背と腹の金筋が美しく輝き出すのが、私の喜びであった。
けれども、蜘蛛は余り幸福でなさそうだった。